生きていた魔術師 後日談妄想





【A cruel prince】





「はーあ、まったく骨折り損のくたびれ儲けだったぜ」

アジトに帰り、シャワーを浴びたルパンがぼやきながら俺の隣に座る。

だが、言葉とは裏腹な、この高級ホテルはあいつが取ったものだった。


首に巻いたタオルから覗く、胸にできた痣を見た時、心臓が重くなる。

「…悪かった」

「ん?ああ、気にすんなよ。これはお前のせいじゃねえ」

へらへらと笑って、痣をタオルで隠す。

その気遣いさえ、俺の罪悪感を膨らませる。

顔を背け、部屋に備え付けられていたバーボンを口に含む。

「次元」


呼びかけられて振り向くと、唇を重ねられた。

歯の間に親指を入れられ、拒否もできない。


「ン、ルパン…今日はそんな気分じゃ」

「ダーメ、お前今にも自殺しちまいそうだもん」

バカ言うなと、痣のない方の胸を押し返す。

とはいえ、言われたことは真実だった。


「…今度同じようなことがあったら、殺してくれ」


こればかりは、快楽にうなされる前に言っておきたかった。

顔を見やると、困った顔で笑っていた。


「そいつは難しいな」

俺の右手を取り、皮膚の硬くなった第二関節に口付ける。

「俺様は世界一の泥棒だけどよ。世界一のガンマンじゃねえ」

約束はできないな、と手首にキスをしてから俺の腿に手を下ろした。


「それよりも、お前が俺様の胸に撃ち込んだ熱い一発のお返し、しなくちゃな」

明るいままソファーに寝かされ、シャツのボタンを解かれる。

なされるがまま、唇と指先に性感帯をいじられる。


「はあっ、あ、あっ、ルパン…」


すぐにスラックスを脱がされて、股を開かされた。

しつこいほど優しく解された後、ゴムもつけずに挿れられる。


「ア、う…んッ…」

いつもはこれでもかと言うほど虐めてくるくせに、今日は処女でも抱くかのように優しい。

そういう優しさが、俺を苦しめていることをルパンは知っているのだろうか。


「ルパ…ン、たり、ね…」

煽るように腰を擦り付けて、穴を指で拡げた。

「そんなかわいいことしなくても、わかってるよ。さっきから奥がヒクついてるぜ」


抜かないまま、俺をうつ伏せにさせて腰を自分の方に引き寄せる。

「あぁッ、あ、はあっ、んア…、はぅ、ンンッ」

緩慢な動きから、途端に激しく腰を打ち据えられる。

奥を抉られる度、広い部屋に声が響いた。

「ルパンッ、あ、ルパ、ぅあッ…」


ナカだけの絶頂が近いのを感じて、汗で滑るソファーの皮を何度も掴み直す。

そんな俺の手に、あいつは指を上から組み合わせた。

ぎゅうと握りしめて、自分から腰を動かした。


「はぁっ、あ、い、イク…ルパン…!」

「ン、いいよ」


あいつがそう囁いた直後、声が裏返るほど叫んだ。

余韻が収まらず、身体がビクビクと跳ねて、勝手に涙が溢れる。


「はぁっ、ハ、はぅ…あ…ぁ…!」

「もう少しだけ、耐えろよ」


俺の口を塞ぎ、射精の近い雄を俺のナカで擦る。

身体を逃がそうとしても、直ぐに押さえ込まれた。

「ンッ、ン、ンンッー!」


肉壁に精液が掛けられたのを感じた時、俺はまたイッていた。

「はぁ、次元…」

あいつの息が整うまで、抱きしめられたまま抜いてさえもらえなかった。


「…殺してなんてよ、こういう時に言うんなら、許すぜ」


頬に口付けた後、俺の涙を舌ですくい取る。


優しいくせに、残酷な言葉だった。







End